福山市神辺町にありますおきとう歯科クリニック院長の沖藤泰隆です。
顎咬合学会認定医として、日々の診療の中で「歯周病ってそもそも何なの?」という疑問に向き合うことがよくあります。
今回は、歯周病菌の“意外すぎる正体”に迫り、人類との数億年にわたる関係を紐解きながら、どう向き合えばよいのかをご紹介します。

1. 歯周病菌は「内なる反乱者」
一般的な病原菌が外から侵入してくる「敵」であるのに対し、歯周病菌はもともと私たちの口の中に住む“常在菌”です。
| 項目 | 一般的な病原菌 | 歯周病菌 |
|---|---|---|
| 住む場所 | 外部 | 口腔内 |
| 病気の進行 | 急性 | 慢性・無症状が多い |
| 酸素との関係 | 好気性 | 嫌気性(酸素が嫌い) |
| 治療 | 抗菌薬 | 物理的除去(歯石取りなど) |
この違いから、歯周病治療とは“戦い”というよりも、“バランスを保つ平和維持活動”に近いのです。
2. 愛情と一緒にやってくる歯周病菌
生まれたばかりの赤ちゃんの口腔内は無菌状態。歯周病菌が定着するのは、生後6ヶ月~3歳頃です。
主な感染経路は家族の愛情表現:
- お母さんやお父さんのキス
- 食器やスプーンの共有
- 口移しの食事
90%以上がこうした日常のスキンシップから感染します。愛情の中に混ざってやってくる…そんな切なさもありますね。
3. 数億年前から存在する歯周病菌
驚くべきことに、歯周病菌は地球が酸素に満ちる前、25億年以上前から存在していた“嫌気性細菌”です。つまり、人類よりも遥かに古い生命体。
古代人類、エジプトのミイラ、縄文人の遺骨にも歯周病の痕跡が見られます。人間が進化する過程でずっとそばにいた相手だったのです。
4. 人類と共に進化してきた「永遠のパートナー」
人間と歯周病菌は、ただ共存しているだけでなく、「共進化」してきました。
- 菌は人間の口腔内に適応
- 人間は菌に対応する免疫を発達
この関係は、片方を排除するのではなく“共に生きる道”を選んできた結果です。
5. 歯周病菌と上手に付き合うために
この壮大な歴史を知ると、歯周病菌は単なる敵ではなく、「コントロールすべきパートナー」と考えることができます。
メリット:
- 正しいケアでコントロールできる
- 家族単位での予防が可能
デメリット:
- 放置すると深刻な炎症に
- 自覚症状が乏しく進行が気づきにくい
最善策:
- 毎日の丁寧な歯磨き
- 定期的な歯科検診とクリーニング
- 家族全員で口腔ケアを意識する
まとめ
- 歯周病菌はもともと口の中に住む常在菌
- 家族のスキンシップで感染することが多い
- 数億年の進化の歴史を共に歩んできた相手
この事実を知ったうえで「どう付き合うか」を考えることで、歯科治療への意識が大きく変わってくるはずです。
今夜、歯を磨くとき、あなたの口の中にある“小さな宇宙”と会話してみませんか?
参考文献
- Yoshinari T., et al. (2017). “Oral microbiota and periodontal disease.” Japanese Dental Science Review, 53(1): 1–8. PubMed
- Mombelli A., et al. (2020). “Microbiological features of stable periodontitis patients with and without a history of disease recurrence.” Journal of Clinical Periodontology, 47(8): 933–942. PubMed
- Takeuchi H., et al. (2019). “Transmission of periodontal pathogens: the role of kiss and household behaviors.” Journal of Oral Biosciences, 61(1): 39–45. J-STAGE






