福山市神辺町にあるおきとう歯科クリニックの院長、沖藤泰隆です。私は顎咬合学会認定医として、咬み合わせを含めた包括的な歯科診療に力を入れています。
虫歯ゼロにこだわりすぎていませんか?本当に守るべき歯周病予防の方法
1. はじめに
コロナウイルスが完全には根絶できず、「withコロナ」という考え方が生まれたように、虫歯についても「ゼロにする」ことが現実的に難しいケースがあります。
それは、人それぞれ虫歯になりやすさ(う蝕リスク)が異なるからです。
定期的に歯医者に通い、しっかりケアしている方でも、唾液の量や質、生活習慣、補綴物の状態などによって虫歯ができてしまうことがあります。
ですので、「虫歯ゼロを目指す」ことは大切ですが、「虫歯ゼロでなければ不健康」という極端な考えには注意が必要です。

2. 虫歯ゼロ神話の背景と変化
2-1 過去のCMが作ったイメージ
これまでの歯磨き粉のCMでは「虫歯予防」「フッ素」「虫歯菌を除去」などの言葉が繰り返し使われてきました。そのため、虫歯がない=健康という認識が一般に広まっていました。
2-2 最近のCMの変化
しかし、近年では「歯周病」という言葉もよく耳にするようになりました。これは非常に良い変化です。歯周病も虫歯と並ぶ、あるいはそれ以上に深刻な口腔疾患であるため、正しい知識が広まることは喜ばしいことです。
3. レントゲンの限界と「見えない虫歯」
「レントゲンで虫歯がゼロか確認したい」という声をよく聞きますが、レントゲンには限界があります。
- 補綴物(詰め物や被せ物)の下は見えません
- 初期の虫歯(エナメル質内)は映らないことがあります
- 見えにくい歯間や歯の根元の虫歯は見落としやすい
実際、レントゲンの感度は約14~38%と報告されており、見逃しのリスクがあることを理解する必要があります。
4. 定期的に通っているのに虫歯ができる理由
メンテナンスを続けていても虫歯ができてしまうケースはあります。これは、う蝕リスクが人によって異なるためです。
- 唾液の量や緩衝能
- 食事の内容と頻度
- 口腔内の細菌バランス
- 咬み合わせや磨き残しやすい形態
これらの要因は人によって異なり、同じケアをしていても虫歯になりやすい人とそうでない人がいます。
また、神経を取った歯などは痛みが出にくく、虫歯の進行に気づきにくいため、気づいたときには重度になっていることもあります。
5. 歯周病という「静かなる進行」
虫歯は痛みを伴うことが多いですが、歯周病は無症状のまま進行する“サイレントディジーズ”です。
歯茎が腫れる、出血するといった初期サインを見逃すと、やがて歯を支える骨(歯槽骨)が溶け、歯がぐらぐらして抜けてしまいます。
日本人の成人の約8割が罹患しているとされ、歯を失う主な原因の一つです。
6. 数字ではなく全体を診る視点
レントゲンで虫歯が写っていないからといって、「健康」と判断するのは危険です。
- 歯茎の状態
- 歯周ポケットの深さ
- 出血の有無
- 補綴物の適合状態
- 咬み合わせのバランス
こうした情報を総合的に評価し、初めて本当の口腔内の健康が見えてきます。
7. おわりに
虫歯ゼロを目指す姿勢は素晴らしいですが、それを絶対視しすぎることは避けるべきです。
むしろ、「虫歯ができにくい環境を整え、万一虫歯になっても早期に発見し、進行を防ぐ」ことが大切です。
そして、歯を守るうえで本当に大切なのは、歯周病の予防と管理です。
「withカリエス(虫歯と共に生きる)」という考え方で、現実的で継続可能な口腔ケアを一緒に考えていきましょう。






