福山市神辺町にありますおきとう歯科クリニック院長の沖藤泰隆です。
近年、高齢化社会において認知症の増加が深刻な社会問題となっています。意外にも、口腔内の健康が認知症の予防に大きく影響することが、数々の研究によって明らかになっています。今回は、どのようなメカニズムで歯と脳が関係しているのか、そして日々の口腔ケアが認知症リスクの低減につながるのかについて解説します。

1. 研究が示す歯と認知症の関連性
残存歯本数と認知症リスク
疫学研究によると、残存歯の本数が少ない人ほど認知症リスクが高いことが示されています。例えば、日本国内の調査では、残存歯が0~9本の人は、10本以上の人に比べてアルツハイマー型認知症の発症リスクが約2.2倍高いことが報告されています。これは、噛むことで脳が刺激され、神経細胞の活性化が促進されるためと考えられています。
また、咀嚼機能の低下により脳の血流が減少し、記憶や学習を司る海馬の萎縮が進む可能性が示唆されています。つまり、歯を失うことは単に食事の問題にとどまらず、脳の健康にも影響を及ぼすのです。
歯周病菌と脳内炎症
歯周病菌は血流を介して脳に到達し、神経炎症を引き起こす可能性が指摘されています。特に、アルツハイマー病の原因とされるアミロイドβの蓄積と歯周病菌の関連性が注目されています。歯周病菌が持つ炎症性物質が脳にダメージを与え、神経細胞の破壊につながることが分かっています。
2. では、どのように対策すればよいのか?
毎日のセルフケアの徹底
- 正しい歯磨きとフロスの使用 毎日の歯磨きに加え、フロスや歯間ブラシを使用することで、歯周病菌の増殖を防ぎましょう。
- バランスの良い食事 よく噛むことが脳への刺激になるため、適切な咀嚼を促す食事を心がけることが大切です。
定期的な歯科検診・プロのケア
- 定期検診で早期発見 歯周病は自覚症状が少ないため、定期的に歯科医院でのチェックを受け、早期治療を心がけましょう。
- 適切な治療による噛む力の維持 失った歯を放置せず、入れ歯やインプラントなどの適切な治療を受けることで、咀嚼機能を維持することが重要です。
全身の健康管理も合わせて
- 適度な運動と十分な睡眠 生活習慣を整え、全身の健康を維持することも認知症予防に寄与します。
まとめ
「歯の健康」は見た目や食事のためだけでなく、認知症予防という観点からも極めて重要です。
- 残存歯の数や咀嚼機能の低下が、脳への刺激を減らし認知症リスクを高める。
- 歯周病菌が全身に広がり、脳内炎症を引き起こす可能性がある。
- 毎日のセルフケアと定期検診が、将来の健康を守る鍵となる。
日々の生活の中で、口腔ケアに少しでも意識を向け、歯科医師と連携しながら健康な口腔環境を維持することが認知症予防にもつながります。ぜひ、今日から自分の歯や歯茎の状態を見直し、必要な対策を講じてみてください。
参考文献
- Kamer, A. R., et al. “Periodontal Disease and the Risk of Incident Dementia: A Systematic Review and Meta-Analysis.” Journal of the American Geriatrics Society, 2021, 69(6): 1661-1671.
- Ide, M., et al. “Periodontitis and cognitive decline in Alzheimer’s disease.” PLoS One, 2016, 11(3): e0151081.
- Dominy, S. S., et al. “Porphyromonas gingivalis in Alzheimer’s disease brains: Evidence for disease causation and treatment with small-molecule inhibitors.” Science Advances, 2019, 5(1): eaau3333.






