福山市神辺町にありますおきとう歯科クリニック院長の
沖藤泰隆です。
顎咬合学会認定医(詳細はこちら)として、歯周病の本質をわかりやすく、同時に深く探求するシリーズ第2回をお届けします。
歯周病の原因を探る – 口の中で何が起きている?
🔹 要点まとめ(端的に3つ)
- お口には100~300種の細菌が共生:そのバランスこそが健康の鍵
- プラーク=細菌の塊:成熟するほど病原性が増すバイオフィルム構造
- ディスバイオシスとPSDモデル:バランスの崩壊が歯周病の本質
🦷 はじめに
第1回では「歯周病とは何か」を掘り下げましたが、今回はその原因に踏み込みます。お口の中にひしめく無数の細菌が、どのようにしてバランスを保ち、そして崩れて歯周病を引き起こすのか。例え話も交えながら丁寧に解説していきます。
🌱 お口の中は細菌のジャングル?
私たちの口腔内には100~300種類の細菌が生息し、数は数億~数十億。しかし、これらは本来、健康維持に寄与する「共生者」です。ただし、環境や生活習慣によってそのバランスが崩れると、悪玉菌が優勢になり病気を引き起こします。

🧬 プラーク(歯垢)の正体
歯の表面につく白くネバネバしたもの、多くは「食べかす」と思われがちですが、実は細菌の集合体=プラーク。このプラーク中の細菌数は恐ろしいほど多く、わずか1mgに約10億個存在しており、目に見える塊には数百億単位にもなるのです。
🧩 PSDモデルとディスバイオシス
従来は特定菌が原因とされましたが、現在は複数菌の協働による「歯周病原生パス」とディスバイオシス(細菌バランスの破綻)という概念で理解されるようになっています。ディスバイオシスとは、細菌の「秩序」が崩れて「疫病の集合体」に進化した状態を指します。
⭐ キーストーン病原菌:P. gingivalis
中でも注目されるのはポルフィロモナス・ジンジバリス(P. gingivalis)。これは少量でも細菌叢の勢力図を塗り替える力をもち、「キーストーン病原菌」と呼ばれます。他菌と比べて実態より数が少なくても、バランス崩壊に大きく関与します。
🧱 バイオフィルムの構造と形成
細菌は歯の表面でバイオフィルム(粘性多層膜)を形成し、「要塞」と化します。その中では:
- 歯ブラシで除去しにくく
- 抗菌薬なども届きにくい
- 時間とともに毒性が増す構造へ発展
実際、バイオフィルムを形成したプラークは非常に頑固です。
🗓 プラーク成熟の段階
- 初期(〜数日):グラム陽性球菌が中心
- 中期(〜1週間):線状菌が繁殖開始
- 成熟期:「ビブリオ」やスピロヘータなど病原性高い菌が現れる
この成熟が進むとプラークはバイオフィルムとして硬く定着し、歯周病を引き起こす毒性も強くなるのです。
🌊 歯周ポケットができるしくみ
炎症が続くと、白血球が細菌を攻撃しようとする際に周辺の組織も巻き込んで壊されます。その結果、歯茎と歯の隙間「歯周ポケット」ができ、酸素が乏しくなることで嫌気性の悪玉菌がさらに繁殖する悪循環が生まれます。
🧼 台所に例える口腔環境
お口の中を「台所」に例えると:
- 清潔な台所:換気よし・掃除が行き届き、害虫は発生しにくい
- 不潔な台所:汚れが蓄積し、カビ・雑菌・害虫が繁殖しやすい
同じように、口腔も清掃を怠るとプラークが蓄積し、最終的にはカンジダ菌(真菌)やトリコモナス(原虫)が出現する「ディープ感染」に進行することもあります。
✅ メリット・デメリット整理
メリット
- メカニズムの理解はセルフケア強化につながる
- バイオフィルム対策で歯ブラシ習慣を見直せる
- 予防法の科学的裏付けが得られる
デメリット
- 細菌叢の崩壊が複雑で万人に共通する対策が困難
- 長期的ケアが必要で、セルフケアだけでは限界あり
- 定期的な歯科医院ケアが不可欠
📝 まとめ
- 歯周病は口腔内細菌叢のディスバイオシスで進行する
- プラークは細菌の要塞であり、成熟すると病原性が高まる
- キーストーン病原菌がバランス崩壊を引き起こし、歯周ポケットが形成される
次回(第3回)は、歯周病が全身に与える影響、特に糖尿病との双方向の関係を深掘りします。炎症の連鎖やメカニズム、医科歯科の連携について詳しく解説していきますので、ぜひご期待ください。
〈執筆:おきとう歯科クリニック院長 沖藤泰隆〉
顎咬合学会認定医
沖藤泰隆|顎咬合学会認定医
📚 PubMed 文献引用
- Kinane DF, et al. Host–bacterial interactions in periodontitis. Periodontology 2000. 2017;75(1):55–77.
- Díaz PI, et al. Development and control of oral biofilms: therapeutic strategies for combating periodontal disease. Periodontology 2000. 2016;72(1):183–203.
- Hajishengallis G. The inflammophilic character of the periodontitis-associated microbiota. Mol Oral Microbiol. 2014;29(6):248–57.






